腎臓内科
腎臓内科は、主に腎臓に関わる症状や疾患を中心に診療します。原因によらず腎機能が低下した状態である「慢性腎臓病(以下、CKD)」の患者数は、成人の8人に1人が該当するといわれています。CKDは最初のうちはほとんど症状がありません。進行すると透析や腎移植が必要となるだけではなく、心血管病(狭心症や心筋梗塞および脳梗塞など)のリスクを上げることが分かってきており、早期に発見して治療することが望まれます。当院では内科専門医と腎臓専門医が連携して腎臓内科の診療を行っています。
腎臓内科で行う検査
血液検査
血液検査では、筋肉の老廃物であるクレアチニンを測定します。クレアチニンは、腎機能が悪化すると腎臓でろ過されずに血液中で多くなるため、数値が上昇します。
また、どれくらいクレアチニンを尿中に排泄する能力を調べる検査がeGFR(推算糸球体濾過量)です。腎機能が悪化すると、数値が下がります。
血液検査の結果は、今までのデータと変化があるのかが重要となります。過去のデータと比較しつつ、定期的な検査を行います。
尿検査
尿検査では、まず尿たんぱくを確認します。たんぱく質は体にとって重要ですが、腎機能が悪化すると濾過するフィルターが壊れたりすることによって、たんぱく質が尿中に出てきてしまいます。
そのほかに、血液が尿に混じっていないかを調べます。腎臓や尿の通り道に病気がある場合に、尿に血液が混じることがあります。
いずれも簡単にできる検査ですが、肉眼的にわからないことも多く、腎臓の機能を調べるうえで重要な検査です。
画像検査
腎臓や尿の通り道を調べるために、腹部超音波検査や腹部CT検査を行うことがあります。腎臓の萎縮の程度や腫瘍を調べたり、多発性嚢胞腎などを診断するためには必要な検査となります。
これらの検査を行い、さらに精密な検査が必要な場合は、腎生検などを行うために専門医療機関へ紹介することがあります。
急性腎不全と慢性腎不全
腎臓の病気が進むと腎臓機能の働きが低下して腎不全を引き起こすことがあります。腎不全には、急激に腎機能が低下する「急性腎不全」と数カ月から数十年の長い年月をかけてゆっくりと腎機能が低下していく「慢性腎不全」に分けられます。
急性腎不全は、早い段階で適切な治療を受けて腎機能の低下となる原因を取り除くことで、機能が回復する可能性があります。しかし、慢性腎不全は、進行して機能が失われた腎臓が元の状態に戻る見込みはほとんどありません。
急性腎不全は、尿の出が悪くなる、尿が全く出なくなるといった症状が現れます。慢性腎不全は、初期の自覚症状がほとんどありません。腎機能の低下によって夜間の尿量が増加する、目のまわりや足のむくみ、疲れやすくなる、食欲が低下する、息切れ、皮膚がかゆくなるといった症状が起こります。
腎臓の役割
腎臓には以下の役割があります。
- 血液をろ過して、老廃物や毒素を尿として排泄
- 血圧を調整する
- 腎臓からでるホルモンの刺激で血液(赤血球)が作られる
- 体内の水分やミネラルのバランスを調整する
- 活性型ビタミンDが骨を強くする
腎臓疾患が原因で起こる主な症状
倦怠感や慢性的な疲労感
原因不明の疲れや倦怠感が日常的に起こる場合、腎臓の疾患が疑われます。症状が続くときは、早めに腎臓内科を受診しましょう。
高血圧
腎臓は、体内の塩分と水分をコントロールして血圧を調整する機能があります。腎臓疾患によって腎機能が低下すると、高血圧が起こります。高血圧の状態が長く続くと、腎臓に負担がかかり、腎機能の低下がさらに進みます。
顔や手足のむくみ
顔や目のまわり、足のむくみは、腎機能の低下によって引き起こされている場合があります。腎機能には、体内で余分な水分や塩分を排出する働きがあります。腎機能の低下によって余分な塩分や水分が滞ってむくみとして現れます。心臓のまわりや肺、肝臓、胃、腸にもむくみが出ることがあります。まれに、尿にたんぱく質が溶け出して血中たんぱく質が低下することでむくみが起こることがあります。肺にむくみが起こると、呼吸が苦しくなることがあります。むくみが気になる方は、早めにご相談ください。
尿量・色の変化
腎臓疾患が原因で、尿量や尿の色が変化することがあります。
健康な方の尿量は、1日に平均して1000~1500mlです。腎臓病末期の方の尿量は、1日400ml以下になることがあります。
尿が濁っている場合は、尿中に大量の白血球が含まれている膿尿が考えられます。膿尿は、尿路感染などによる炎症がほとんどです。
尿が泡立つ、尿が赤い場合は、たんぱく質や赤血球が尿中に含まれて見た目が変化していると考えられます。腎炎などの腎臓疾患が疑われます。
たんぱく尿
尿中にたくさんのたんぱく質が出ている状態です。健康な人の尿にたんぱく質が出るということは、ほとんどありません。たんぱく尿は、腎臓に炎症が起こっていたり、腎臓に負担がかかっている可能性が考えられます。たんぱく尿を放置していると、腎機能の低下や腎臓障害を進行させることにつながります。たんぱく尿の原因によって、治療法も異なります。適切な検査を行い、原因に合わせた治療を行うことが大切です。
尿潜血
尿潜血は、顕微鏡的血尿とよばれる目では確認できないレベルで尿に赤血球が混じっている状態です。尿に血が混じっていることが肉眼ではっきりとわかるものは、血尿といいます。尿潜血は、糸球体腎炎などの疾患が疑われます。血尿は、腎臓、膀胱、尿管、尿道に炎症や結石、悪性腫瘍、何らかの感染症などの異常が考えられます。慢性的な疲労から、一過性の尿潜血が起こることがありますが、尿検査などで尿潜血を指摘されたら早めにご相談ください。
おもな腎臓病・病態
糖尿病性腎症 (DKD)
糖尿病性腎症とは、糖尿病の三大合併症のひとつです。腎層には、尿をろ過する「フィルター」のような役割があります。糖尿病で血糖値が高い状態が続くと動脈硬化が進行して毛細血管に障害を受けたり血管が壊れて、腎臓で老廃物をろ過する機能が低下します。早期発見することができれば、血糖値のコントロールによって腎障害の進行を遅らせることができます。腎障害の進行度合いによって、血液をサラサラにする抗血小板剤や血圧を下げるACE阻害剤、利尿剤、経口吸着剤などの薬物療法を行います。
慢性(糸球体)腎炎
慢性糸球体腎炎は、慢性腎炎の中でも代表的な疾患で、血液から尿をつくる腎臓の働きに炎症が生じている状態です。血尿やたんぱく尿、高血圧、めまい、むくみ、体の倦怠感、頭痛など人によってさまざまな症状が起こります。特に、学校や会社で行う健康診断の尿検査でたんぱく尿や血尿を指摘されて病気がわかるケースがほとんどです。病気の確定診断には、腎生検(腎臓の組織検査)を行います。状態や重症度によってステロイド剤や免疫抑制剤、また腎臓を保護する作用のある血圧の薬などを併用しながら治療を行います。
腎硬化症
高血圧が続くと、動脈硬化や血流の悪化によって腎組織が徐々に機能を失い腎障害を引き起こします。そのまま放置していると、糸球体に届く血液が乏しくなることで腎不全に陥るリスクがあるので、早期発見と原因に合わせて適切な治療を行いましょう。
多発性嚢胞腎
多発性嚢胞腎とは、遺伝子異常が原因で起こる疾患です。水風船のようなのう胞が両側の腎臓にたくさん発症すると、腎臓の組織が影響を受けて腎機能が徐々に低下して最終的に腎不全が起こる可能性があります。末期腎不全になると、透析や移植が必要となります。初期は、自覚症状がほとんどありません。進行していくと、肉眼的血尿、側腹部痛、背部痛、発熱、疲労、頭痛、腹部膨満感などの症状が現れます。食事は塩分の摂り過ぎ、たんぱく質の摂り過ぎに注意しましょう。こまめにお水を飲むようにして、運動は腹部への衝撃を避け軽い運動を摂り入れるようにしてください。
現在、この病気の根治治療となるものはありませんが、定期的に観察しながら進行を遅らせる薬物療法が主な治療となっております。
自己免疫疾患(膠原病)
発症する原因は、「免疫」の異常と考えられています。免疫は本来、細菌やウイルスなどを体内から排除するための機能ですが、自分の組織や細胞を異物と認識して排除しようとする「自己抗体」によって腎臓の組織や細胞に炎症が起こります。その中でとくに有名なのが、全身性エリテマトーデス(SLE)やANCA関連血管炎です。代表的な症状として、発熱が続く、発疹、関節痛、朝の体のこわばり、筋肉痛などです。また、寒い時に指先が白くなるレイノー症状なども特徴的な症状のひとつです。
自己免疫疾患は、ステロイド剤や免疫抑制剤、生物学的製剤などを、症状や状態をみながら組み合わせて使用して、症状が落ち着いている状態(寛解状態)を長く保つ治療を行います。
ネフローゼ症候群
1日に3.5g以上の尿蛋白排泄があり、血清アルブミン値 3.0 g/dl未満の低アルブミン血症があると、ネフローゼ症候群と診断されます。また、病歴や血液検査、画像検査、合併症の有無、腎組織検査(腎生検)などから総合的に判断いたします。
たんぱく質が尿に過剰に含まれることで、血液中のたんぱく質の濃度が低下することによって、体のむくみや脂質の血中濃度の上昇がみられます。発症する原因は様々ですが、感染症、膠原病、血液疾患(多発性骨髄腫など)、悪性腫瘍など様々な疾患との関連が指摘されています。
まぶたや足のむくみの症状があり、手で押すとしばらくへこんだままの状態になるほどむくみが出ます。進行していくと、部分的なむくみが全身に広がり、お腹や肺周りに水がたまってしまいます。また、尿量の低下、食欲不振、体重増加などの症状が現れます。
治療は、原因となる疾患を治療することが原則ですが、発症原因が特定できない場合や状態によっては副腎皮質ステロイド剤や降圧剤、利尿剤などの治療薬を組み合わせて使用します。症状が強く出る急性期には、入院して安静に過ごしながら、食事管理と薬物療法を行います。状態が落ち着いた寛解期を長く保つためにも、規則正しい生活と定期的な診察・検査を行うことが重要です。