ヘリコバクター・ピロリ菌
胃粘膜に生息している細菌で、螺旋形をしており、4~8本の鞭毛で活発に動きます。胃酸には口から入ってきた細菌を殺菌する役割を担っているため、通常の細菌は胃の中で生息できません。ピロリ菌はウレアーゼという酵素を出して周囲の強酸を中和することで胃の中でも生息することが可能になっています。
人から人への感染もあるため、家族に胃がんや十二指腸がん、胃・十二指腸潰瘍の方がいる場合、ご自身がピロリ菌に感染している可能性が高くなります。感染していても除菌治療を行うことで様々な疾患の発症を低減できますし、次世代への感染防止と胃がん予防にもつなげることができます。
ピロリ菌と胃がん
胃がんにはピロリ菌感染が深く関わっているとされており、数多くの研究結果によってそれが裏付けられています。ピロリ菌に感染していると慢性的な胃炎を起こします。繰り返される炎症を起こすと、胃粘膜から胃液や胃酸を分泌する組織が失われて、やがて萎縮性胃炎へと進行していきます。萎縮性胃炎が進行すると胃粘膜が腸の細胞に変わってしまう腸上皮化生を起こします。この腸上皮化生が起こると胃がんリスクが大幅に上昇してしまいます。
検査方法
胃カメラを用いた検査
- 迅速ウレアーゼ試験
- 鏡検法(組織の標本を顕微鏡で調べてピロリ菌の有無を調べます)
- 培養法(採取した粘膜組織を培養してピロリ菌の有無を調べます)
胃カメラを使わない検査
- 抗体測定(採血もしくは検尿など)
- 尿素呼気試験
- 検便(便中ピロリ菌抗原検出法)
除菌治療について
通常、初回治療ではアモキシシリンとクラリスロマイシンというという2種類の抗生剤とプロトンポンプ阻害剤である胃酸分泌抑制剤を用います。服用は1週間で、これで治療は終了です。除菌治療は100%成功するものではなく、初回治療での除菌成功率は80%前後です。
初回治療に成功しなかった場合には、抗生剤を変えて2回目の除菌治療が可能です。1回目と2回目の除菌治療を受けた方の除菌成功率は約90%です。なお、抗生剤にアレルギーがある場合は、通常2回目の除菌治療で使う抗生剤を初回から用います。
健康保険の適用について
ピロリ菌感染検査と治療で健康保険の適用を受けるためにはいくつかの条件があります。消化性潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少症、早期胃がん内視鏡治療後胃、ピロリ菌感染による慢性胃炎がある場合に適用を受けることができますが、慢性胃炎の場合は内視鏡検査が必須となっています。バリウム検査で慢性胃炎と診断され、血液検査などでピロリ菌感染が確認できても内視鏡検査を受けなければ除菌治療を健康保険適用で受けることはできませんのでご注意ください。当院ではこうした内容について、くわしくご説明していますのでわからないことがありましたら何でもご相談ください。